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高血圧バイオマーカーの重要性 |
高血圧は中高年以降に発症する生活習慣病の一つであり、適切な治療が行われないと脳卒中、心不全、心筋梗塞、不整脈
などの疾患を引き起こします。高血圧患者は米国内だけでも5000万人、そのうち30%は未診断群(NHLBI)とされており、全世界では高血圧患者の数は
10億人に上ると考えられています。また、妊娠高血圧については、妊娠に関連する主要な死亡リスクの一つとして、重要な課題とされています。
こうした重要性にも関わらず、高血圧は自覚症状に乏しいあるいは目立った症状を殆ど示さないことから、未診断のまま放置されているケースが多いと
考えられています。 現在のところ、高血圧患者のおよそ90%については発症機序が明らかになっていません。高血圧に対する治療薬は、現在のところ血管弛緩、 水分排泄の促進、またはノルアドレナリン等の神経伝達物質の阻害剤によって、血圧を低下させています。現在市場に出ている高血圧治療薬は カルシムブロッカー、ACE阻害剤、アンギオテンシンIIアンタゴニスト、β遮断薬、α遮断薬、利尿薬の何れかによって構成されています。 高血圧治療薬の種類がこれほど多いのは、重篤な副作用なしに単剤だけで効果的に血圧を下げることが難しいことを示しています。 高血圧の診断方法は、血圧測定しかないのが現状であり、高血圧のバイオマーカーは、高血圧の診断や治療薬の開発に役立つと 期待されています。 |
高血圧の発症機序 |
生体内における血圧制御機構には、レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系がよく知られており、現在販売されている
高血圧治療薬には、これらの構成因子に作用することで効果を発揮するものがあります。一方、近年、アラキドン酸代謝物の一部が高血圧症の
発症に深く関わっていることが明らかにされつつあり、高血圧治療薬や診断薬の開発分野において、注目を集めています。 アラキドン酸の代謝物としては、これまでにもプロスタグランジンやロイコトリエンといった生理活性物質が知られていましたが、 最近になって、チトクロムP450(cytochrome P450:CYP 2C および2J)の持つアラキドン酸エポキシゲナーゼ活性によって生成される 一連の水溶性エポキシドが、強力な血管作動性を示すことが発見され、高血圧の発症に深く関わっていることが明らかになりつつあります。 アラキドン酸はCYPsの作用により、一群のエイコサトリエノイックアシッド(eicosatrienoic acids: EETs)と ヒドロキシエイコサテトラエノイックアシッド(hydroxyeicosatetraenoic:HETE)すなわち、 5,6-EET、8,9-EET、11,12-EET、14,15-EET、20-HETEに変換されます。EETは、さらにエポキシドヒドロラーゼ(epoxide hydrolase: EH)の作用により ぞれぞれ5,6-DHET、8,9-DHET、11,12-DHET、14,15-DHETに加水分解されます。EETsと高血圧発症メカニズムとの関連性については 十分に解明されていません。EETsおよびDHETsはどちらも血管作動性を示しますが、現在のころ、EETsの活性はDHETsより強いと考えられており、 EETsをDHETsに変換するmEHやsEHの発現レベルが血圧制御に一定の役割を果たしていると示唆されています。 |
高血圧モデルラット(SHR)の尿中14,15-EET濃度は、対照ラット(WKY)に比べ大幅に高値を示します(左図)。 また、ヒトにおいても妊娠高血圧患者の尿中14,15-DHET濃度は、正常妊婦に比べ有意に高値を示します(右図)。 |
エイコサトリエノイックアシッド(eicosatrienoic acids: EETs)の多彩な生理活性 |
エイコサトリエノイックアシッド(eicosatrienoic acids: EETs)は血管作動性以外にも、以下のような作用を示すことが知られており、
様々な疾患を対象とした創薬研究、病態解析等に応用されています。 ・Ca依存性Kチャネルを活性化⇒血管平滑筋弛緩 ・抗炎症作用 ・血管内皮細胞におけるNO産生亢進 ・血管内皮細胞の増殖と血管新生 ・tPA発現促進による線溶系活性化 ・心筋細胞の虚血障害保護作用 ・培養細胞におけるCYP2J2、CYP BM3F87V強制発現、EET添加で増殖亢進 ・EETの過剰発現またはEET投与が、がんの転移(in vitro)を促進 ・チトクロムP450 2J2は癌細胞において高発現。ヒトがん患者101/130名(77%)で発現 |
【製造元】:Detroit R&D, USA |
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関連商品
【製造元】:Kamiya Biomedical, USA |
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