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MDA測定用 ヘモグロビン除去プロトコル
【ヘモグロビン除去によるMDA測定精度の改善】
MDA測定キット(TBARS法)は532nmを中心とした吸光度を使用しているため、 サンプル中にヘモグロビンが含まれると、測定誤差の原因となる場合があります。サンプル中のヘモグロビンを除去することで より精度の高いデータが得られるようになります。また、ヘモグロビンの影響が無くなることで、2波長測光(Jentzsch法)でも 測定できるようになります。
マロンジアルデヒド(MDA)測定時の吸光度スペクトル

Badcockら1)はMDAとTBAを反応させた後にブタノール抽出とアルカリ抽出を組み合わせて実施することで MDA測定に干渉を与えるヘモグロビンを効率的に除去し、MDA測定精度を高めることができることを報告しています。
サンプルの前処理ではなく、サンプルとTBA試薬とを反応させた後にヘモグロビンを除去することにご注意ください。

【必要な資材】: MDA測定キットの通常のプロトコルに加え、下記の試薬をご用意ください。
1) ブタノール
2) 1N NaOH水溶液
3) 3.7M リン酸
4) エッペンチューブ(サンプル/キャリブレーター用に2本ずつ追加)
【プロトコル】
Step 1) エッペンチューブにBHT試薬を10μL分注します。
Step 2) キャリブレーターまたはサンプルを250μL添加します。
Step 3) 酸試薬を250μL添加します。
Step 4) TBA試薬を250μL添加します。
Step 5) ボルテックスでよく攪拌します(約5秒)。
Step 6) 60℃にて60分間インキュベートします。
  ----------(ここまではMDAキットの通常の測定法です)-----------
Step 7) 反応液を室温に戻し、ブタノールを500μLを添加します。
Step 8) ボルテックスでよく攪拌します(約5秒)。
Step 9) 10,000 Gにて2〜3分遠心します。
Step 10) ブタノール画分400μL(上層)を新しいエッペンチューブに回収します。
Step 11) 回収したブタノール画分に対し、1N NaOH水溶液を500μL添加します。
Step 12) ボルテックスでよく攪拌します(約5秒)。
Step 13) NaOH画分400μL(下層)を新しいエッペンチューブに回収します
Step 14) 回収したNaOH画分に対し、直ちに3.7M リン酸 100μLを添加します。
Step 15) 吸光度を測定します。
3rd derivative analysisにて解析する場合には400〜700nmを1または2nm間隔で吸光度を測定。
Jentzsch法で解析する場合には535nmと572nmにおける吸光度を測定します。
  TBA2-MDAはアルカリ条件下では不安定なため、直ちに酸を添加してください。
赤血球可溶化液に対するブタノール抽出 ⇒NaOH抽出 実施例
赤血球可溶化液に対してMDAを添加したものを対象に、ブタノール抽出 ⇒NaOH抽出を行い、添加回収試験を実施。 ヘモグロビン1.7mg/mLおよび5.2mg/mLを含む赤血球可溶化液に対しMDA 2μMを添加し、ブタノール抽出および NaOH抽出処理をしたときの添加回収率を評価。
※この試験ではMDAとして、スタンダード(tetramethoxypropane)を使用しています。
1)赤血球溶解液(HB=1.7mg/mL):青色細線
2)赤血球溶解液(HB=1.7mg/mL)+ MDA(2μM):青色太線
3)赤血球溶解液(HB=5.2mg/mL):赤色細線
4)赤血球溶解液(HB=5.2mg/mL)+ MDA(2μM):赤色太線

マロンジアルデヒド(MDA)ブタノール抽出画分の吸光度スペクトル
ブタノール抽出画分の赤血球溶解液の吸光スペクトル

マロンジアルデヒド(MDA)前処理後の吸光度スペクトル
ブタノール抽出 ⇒NaOH抽出画分の吸光スペクトル

バックグラウンドは少し残っていますが、MDA2-TBAのピークが明瞭に検出できるようになります。 尚、このデータでは、アルカリ条件下で測定しているためピーク波長が長波長側(557nm)にシフトしています。

マロンジアルデヒド(MDA)前処理における添加回収試験
ブタノール抽出 ⇒NaOH抽出画分における添加回収試験

ブタノール抽出 ⇒NaOH抽出を実施することにより、3rd derivative analysisでは95〜98%、 Jentzsch法(535nmと572nmでの吸光度の差分)で97〜103%、単波長測定(532nm)でも86〜90%の良好な添加回収率が得られています。

マロンジアルデヒド(MDA)測定キット 参考文献
【参考文献】
1) Nonchromatographic Assay for Malondialdehyde-Thiobarbituric Acid Adduct with HPLC Equivalence.
N. R. Badcocka, G. D. Zoanetti and E. S. Martin. Clinical Chemistry 43,p1655-1657(1997)
MDA測定キット 学術情報 データ解析法の解説
血清/組織マロンジアルデヒド(MDA)測定用 ヘモグロビン除去プロトコル
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