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(本製品は研究用試薬です) |
【高血圧研究マーカー】 |
14,15-ジヒドロキシエイコサトリエノイックアシッド(dihydroxyeicosatrienoic acid: 14,15-DHET)は
アラキドン酸に由来するエイコサノイドの一つです。
アラキドン酸は、チトクロームP450の作用により、強力な血管作動性を示すエイコサトリエノイックアシッド
(eicosatrienoic acids: EETs)に変換されます。EETは、さらにエポキシドヒドロラーゼ(epoxide hydrolase: EH)により
加水分解され、DHETを形成します。
14,15-EETおよび14,15-DHETは高血圧の発症と深く関わっていると考えられており
高血圧疾患モデル動物(Spontaneously Hypertensive Rat: SHR)および高血圧患者における増加が報告されています。
例えばsEH阻害剤であるN,N'-dicyclohexylureaは、高血圧ラット(SHR)の血圧が大幅に低下させる効果を示す一方、
正常ラット(WKY)の血圧には影響を与えないことが報告されています。
このため、EET、DHETおよび両物質の代謝に関わる酵素であるチトクロームP450、エポキシドヒドロラーゼ(sEHおよびmEH)は
高血圧治療薬開発における重要なターゲットとして注目されています。
さらに、近年、可溶性エポキシドヒドロラーゼ(sEH)は副腎だけでなく血管内皮細胞においても産生されていること、
EETが血管弛緩だけでなく様々な生理作用を持つ可能性が示唆されており、脳梗塞、がん等における創薬バイオマーカーとして
期待されています。 本キットは、ヒトおよび動物由来の14,15-DHETを測定します。
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【製品仕様】 |
測定対象: |
尿、血清、血漿、細胞懸濁液などに含まれる14,15-DHET |
特異性: |
14,15-DHET特異的(類縁体に対する交差反応性確認済み) |
測定下限: |
10 pg/mL |
所要時間: |
約3時間 |
サンプル所要量: |
100μL/well |
テスト数: |
96 wells |
必要な器具: |
マイクロプレートリーダー(測定波長450nm)、マイクロピペット(5~1000μL用)、マルチチャネルピペット、
蒸留水、1.2mLマイクロチューブ、硫酸(2N)5mL
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必要な器具(前処理用): |
血清、血漿、細胞、組織サンプルを測定する場合、前処理のために下記の試薬、器具類が必要です。
尚、尿サンプルの場合、前処理は必要ありません。 酢酸エチル、TPP (triphenylphosphine)、2M KOH、メタノール、酢酸、20%蟻酸、
エタノール又はジメチルホルムアミド、アルゴン又は窒素ガス、遠心機(2000rpm)、ボルテックス、50℃恒温槽、pHメーター
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保存条件: |
冷凍(-20℃) |
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【キットの構成】 |
1. |
マイクロプレート(抗14,15-DHET抗体固相化済み) |
96wells |
2. |
スタンダード |
2μL x 1本(1 mg/mL) |
3. |
HRPコンジュゲート |
12μL x 1本。使用時にHRPバッファー12mLと混和します。 |
4. |
サンプル希釈液(x 10濃縮) |
25 mL 使用時に10倍希釈します |
5. |
HRPバッファー |
15mL そのまま使用します |
6. |
洗浄液(x 10濃縮) |
25mL x 1本。蒸留水225mLと混和して使用します。 |
7. |
TMB基質 |
24mL そのまま使用します |
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【サンプル前処理(尿)】 |
尿検体の場合、調製済みサンプル希釈液にて4倍希釈して、ELISAに適用します。
尚、ヒト尿中にはグルクロン酸抱合体が含まれている場合があり、「トータル14,15-DHET測定キット: 商品コード KDH-003M/013M」を用いることで
グルクロン酸抱合体も含めた、トータル14,15-DHET濃度を求めることができます。 |
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【サンプル前処理(血清または血漿)】必要量 1.0mL |
1. |
血清または血漿1mLに対し、酢酸12μLを添加しpH4付近とします。 |
2. |
酢酸エチルによる抽出を行います。酢酸を添加した血清または血漿1mLに対し、酢酸エチル1mLを混合、
ボルテックスにて激しく撹拌したのち、2000rpmにて室温10分間遠心します。 |
3. |
上層(有機溶媒相)、中間層(蛋白質)、下層(水相)に分かれるので、上層を回収し、中間層を取り除きます。
下層(水相)を新しい容器に回収し、酢酸エチルによる抽出操作をさらに2回繰り返します。 |
4. |
回収した上層をプールし、アルゴンガスまたは窒素ガス存在下にて乾固させます。 |
5. |
鹸化処理(saponification)を行います。
乾固したサンプルを、2mLの20%KOH(2M KOH 1mLとメタノール4mLの混合液)に溶解、ボルテックスにかけ、50℃1時間インキュベートします。
水層を回収します。
回収した水層2mLに対し蒸留水3mLを添加し、20%蟻酸(132μL)を添加してpH5.5付近に調整します。
酢酸エチルによる抽出操作を3回繰り返します。サンプルに対し等量の酢酸エチルを加え、ボルテックスにかけます。
遠心機(2000rpm x 10分 室温)にかけ、上層(有機溶媒相)を回収。
回収した上層をプールし、アルゴンガスまたは窒素ガス存在下にて乾固させます。
※乾固させたサンプルは-20℃保存が可能です。 |
6. |
乾固したサンプルを20μLのエタノールにて溶解、調整済みサンプル希釈液380μLを添加します。 |
7. |
ELISAキットに適用し、サンプル中の14,15-DHET濃度を算出します。
上記プロトコルでは血清または血漿1mLが2.5倍に濃縮されているため、ELISA測定値を2.5で割って補正します。 |
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【サンプル前処理(細胞)】 |
1. |
終濃度0.1 mM TPP (triphenylphosphine)共存下にて、サンプルをホモジネートまたは
ソニケーション処理します。TPPが析出する場合には、遠心して取り除きます。 |
2. |
酢酸を添加して、サンプルのpHを3~4になるよう調整します。 |
3. |
酢酸エチルによる抽出を行います。サンプルに対し等量の酢酸エチルを加え、ボルテックスにかけます。
遠心機にかけ、上層(有機溶媒相)を回収し、新しいマイクロチューブに移します。残った下層(細胞懸濁液)に対し、再び等量の
酢酸エチルを添加、同様に上層を回収します。この抽出操作を3回繰り返します。 |
4. |
回収した上層をプールし、アルゴンガスまたは窒素ガス存在下にて乾固させます。 |
5. |
鹸化処理(saponification)により脂肪酸を除去します(下記参照)。 |
6. |
乾固したサンプルを少量(10~20μL)のエタノール又はジメチルホルムアミドにて溶解し、
さらに調整済みサンプル希釈液500μLを添加します。 |
7. |
ELISAキットに適用します。測定レンジ内に収まるよう、3段階(x1, x2, x10)程度の
希釈列を作って測定されることをお奨めします。 |
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【サンプル前処理(組織)】 |
1. |
組織1gに対し、蒸留水4mL、TPP (triphenylphosphine)0.01mgを添加し、ホモジネートします。 |
2. |
酢酸8μLを添加します。 |
3. |
酢酸エチルによる抽出を行います。サンプルに対し等量の酢酸エチルを加え、ボルテックスにかけます。
遠心機にかけ、上層(有機溶媒相)を回収し、新しいマイクロチューブに移します。残った下層(細胞懸濁液)に対し、再び等量の
酢酸エチルを添加、同様に上層を回収します。この抽出操作を3回繰り返します。 |
4. |
回収した上層をプールし、アルゴンガスまたは窒素ガス存在下にて乾固させます。 |
5. |
必要に応じ、鹸化処理(saponification)により脂肪酸を除去します(下記参照)。 |
6. |
乾固したサンプルを20μLのエタノール又はジメチルホルムアミドにて溶解し、
さらに調整済みサンプル希釈液500μLを添加、10,000rpmにて5分間遠心し、上清を回収します。 |
7. |
ELISAキットに適用します。 |
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【鹸化処理による脂肪酸の除去】 |
1. |
乾固したサンプルを、2mLの20%KOH(2M KOH 1mLとメタノール4mLの混合液)に溶解します。 |
2. |
ボルテックスにかけ、50℃1時間インキュベートします。 |
3. |
1.5倍容量の蒸留水を添加し、20%蟻酸を添加してpH5付近に調整します。 |
4. |
酢酸エチルによる抽出を行います。サンプルに対し等量の酢酸エチルを加え、ボルテックスにかけます。
遠心機にかけ、上層(有機溶媒相)を回収し、新しいマイクロチューブに移し、アルゴン又は窒素存在下にて乾固させます。 |
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【測定手順】 |
1. |
使用前に、全ての試薬を室温(20~25℃)に戻しておきます。 |
2. |
スタンダードを調製します。マイクロチューブを5本用意し、調製済みサンプル希釈液 900μmLを
分注しておきます(スタンダード-1~5)。スタンダード(2μL)をスピンダウンし、調製済みサンプル希釈液 1998μLを添加混合し、
スタンダード-6とします。スタンダード-6から100μLを取出し、調製済みサンプル希釈液 900μLと混合、スタンダード-5とします。
同様に100μL + 900μLの系列希釈によりスタンダード1~4を調製します。
B0には、調製済みサンプル希釈液をそのまま用います。 |
3. |
ウェルの配置を決定します。ブランク(BL)ウェル、B0ウェル、
およびスタンダード1~6をそれぞれ少なくともN=3となるよう配置してください。 |
4. |
調整済みサンプル希釈液を、ブランク(BL)ウェルに200μL、
B0ウェルに100μL分注します。スタンダード1~6およびサンプルを100μL/ウェル分注します。 |
5. |
調整済みHRPコンジュゲートを、ブランク(BL)を除く全てのウェルに100μL
分注、軽く振とう混和し、室温にて2時間静置します。 |
6. |
液を捨て、調製済み洗浄液400μL/ウェルを用いて3回洗浄し、最後にペーパータオルに
叩き付けて液をよく切ります。 |
7. |
TMB試薬を全てのウェルに200μL分注し、室温にて15~30分間静置します。 |
8. |
2N硫酸を50μL/well分注し、マイクロプレートリーダーにて450nmの吸光度を測定します。 |
9. |
検量線を引き、サンプルの吸光度から14,15-DHET濃度を算出します。 |
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※操作方法等は予告なく改訂される場合があります。ご使用前に商品同梱の使用説明書を必ずご確認ください。 |
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【参考文献】 |
1) |
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2) |
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3) |
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8) |
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9) |
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品名 |
商品コード |
容量 |
価格(税込) |
遊離14,15-DHET 測定キット |
KDH-001M |
96 wells |
110,000円 |
遊離14,15-DHET 測定キット |
KDH-011M |
96 wells x 2枚 |
販売中止 |
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【製造元】:Detroit R&D, USA
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※表示価格に消費税は含まれておりません。ご請求時には消費税が別途加算されます。
製品の仕様、価格、操作方法等は予告なく変更される場合があります。
特に操作方法につきましては、ご使用前に商品同梱の使用説明書を必ずご確認ください。 |
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