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男性の不妊と酸化ストレス | |
精子の受精能力には、精子の数と運動性が重要なファクターとされています。酸化ストレス(oxidative stress / 活性酸素種 Reactive Oxygen
Species:ROS)はこれらのファクターに影響を与えることが知られており、酸化ストレスの高い、あるいはDNA損傷レベルの高い男性では
不妊を生じやすいことが報告されています(Saalu LC: Pak J Biol Sci 13,p413-422,2010)。精子の成熟には、ROSレベルが十分低く保たれて
いることが必要であり、過剰なROSは精子の成熟(sperm capacitation)、先体反応(acrosome reactions)、運動性(motility)、
卵細胞膜(oolemma)と精子細胞膜の融合反応などに影響を与えるとされています。
精漿中のROSの主な発生源は未成熟な精子と白血球であるとされ、生成したROSは精子細胞膜において、脂質化酸化反応(lipid peroxidation)を
生じ、ダメージを与え、精子成熟の阻害、さらにはアポトーシスを惹起することがあります
(Ruder EHら: Curr Opin Obstet Gynecol 21,p219-222, 2009)。
【文献】: Ashok Agarwal, Anamar Aponte-Mellado, Beena J Premkumar, Amani Shaman and Sajal Gupta: The effects of oxidative stress on femalereproduction: a review. Reproduct Biol and Endocrinol 10,p49-79(2012) 出産、不妊と酸化ストレスとの関連性についての総説です。 Yasuda M, Ide H, Furuya K, Yoshii T, Nishio K, Saito K, Isotani S, Kamiyama Y, Muto S, Horie S: Salivary 8-OHdG: a useful biomarker for predicting severe ED and hypogonadism. J Sex Med 5(6),p1482-1491(2008) 唾液中の8-OHdG濃度は中年男性の重度のEDおよび性腺機能低下の有用なバイオマーカーになり得ることが 示唆されています。 Sakamoto Y, Ishikawa T, Kondo Y, Yamaguchi K, Fujisawa M: The assessment of oxidative stress in infertile patients with varicocele. BJU Int 101(12), p1547-1552(2008) 不妊症男性患者(無精子症および精子減少症)の精漿中8-OHdG濃度の測定例です。 |
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Muratori M, Tamburrino L, Marchiani S, Cambi M, Olivito B, Azzari C, Forti G, Baldi E: Investigation on the Origin of Sperm DNA Fragmentation: Role of Apoptosis, Immaturity and Oxidative Stress. Mol Med. 21,p109-122(2015). doi: 10.2119/molmed.2014.00158. 不妊には精子DNAの断片化が関与すると考えられています。精子を抗MDA抗体にて染色し、 フローサイトメトリー解析。精子DNAの断片化は、抗MDA抗体染色性と関連することが示されています。 |
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女性の不妊と酸化ストレス |
卵母細胞から卵子への分化には、酸化ストレスが深く関わっていることが明らかにされつつある。卵母細胞は2回の減数分裂を経て
卵子を形成するが、第一減数分裂はROSの刺激により進行、一方、次のステップである第二減数分裂には抗酸化物質が関与する
(Behrman HRら: J Soc Gynecol Investig 8,S40-S42, 2001)。
排卵(ovulation)後に形成される黄体(corpus luteum)においても酸化ストレスの関与が報告されている。黄体期(luteal phase)の
初期〜中期にかけて抗酸化酵素の一つであるCu/Zn-SODレベルが上昇、黄体退行期では低下する。黄体退行期では過酸化脂質
(lipid peroxidation)の形成が観察されている。
また、加齢(aging)に伴う卵子の品質低下には、ミトコンドリアDNAの酸化損傷が関わっており、DNA酸化損傷マーカー
8-hydroxy-2'-deoxyguanosine (8-OHdG)の増加が観察されている。
【文献】: Tamura H, Takasaki A, Miwa I, Taniguchi K, Maekawa R, Asada H, Taketani T, Matsuoka A, Yamagata Y, Shimamura K, Morioka H, Ishikawa H, Reiter RJ, Sugino N: Oxidative stress impairs oocyte quality and melatonin protects oocytes from free radical damage and improves fertilization rate. J Pineal Res 44(3), p280-287(2008) 濾胞液を対象とした研究例です。 |
不妊関連疾患と酸化ストレスマーカー |
子宮内膜症(Endometriosis) 子宮内膜症は、子宮内膜(endometrial tissue)が子宮内腔や子宮体部以外において増殖する疾患であり、不妊を伴うケースがある。 腹腔液中の脂質化酸化物(マロンジアルデヒド: MDA)、IL-6やTNF-α、IL-βといった 炎症性サイトカイン、IL-8やVEGFといった血管新生因子、MCP-1、酸化LDL(ox-LDL) 濃度の上昇が報告されている(Mier-Cabrera Mら:BJOG 118,p6-16,2010)。 子宮内膜症患者血漿において脂質過酸化マーカー:イソプラスタン 濃度の上昇も報告されている(Sharma I ら:Fertil Steril 94,p63-70,2010)。 また、Nアセチルシステイン(N-acetylcystein: NAC)やビタミンEといった抗酸化物質は子宮内膜組織の増殖を抑制する (Foyouzi N ら: Fertil Steril 82(Suppl 3),p1019-1022,2004)ほか、患者において 血清抗酸化レベルが低値を示すことが報告されている (Szczepanska Mら: Fertil Steril 79,p1288-1293,2003)。さらに、抗酸化物質を豊富に含む野菜果物の摂取は、子宮内膜症の発症リスクを 低減することが示唆されている(Parazzini Fら: Hum Reprod 19,p1755-1759,2004)。 多嚢胞性卵巣症候群(Polycystic ovary syndrome: PCOS) 排卵障害と多嚢胞性卵巣を特徴とする病態で、再生産可能年齢女性の約18%で発症するとされ、患者の90%は不妊となる。 主要な発症リスクはインシュリン抵抗性であり、酸化LDL(ox-LDL)濃度の上昇が 報告されている(Crist BLら: J Womens Health (Larchmt) 18,p795-801,2009)。 原因の明らかでない不妊(Unexplained infertility: UI) 避妊処置なしに性交しているカップルで12ヶ月以上経過しても妊娠しないもののうち、既存の不妊要因が否定されるケースのこと。 米国ではカップルの15%が該当するとされる。原因は明らかにされていないが、UI群において腹腔液(Peritoneal fluid: PF)の 過酸化脂質レベル(4-HNEおよびマロンジアルデヒド MDA)が高値を示すことが報告されている(Polak G ら: Ginekol Pol 72,p1316-1320,2001および Polak G ら: Ginekol Pol 70,p135-140,1999)。 |
習慣性流産と酸化ストレス |
3回以上連続で流産するケースを示す。50%の症例については原因が突き止められているが、残り50%については原因は
明らかにされていない。しかしながら、習慣性流産歴のある女性は、対照群に比べ血漿抗酸化物質レベル
(グルタチオン:GSH、ビタミンA/E、βカロテン)が
有意に低値を示すことが報告されている(Simsek M ら: Cell Biochem Funct 16,p227-231,1998)ほか、
抗酸化酵素レベル(グルタチオンペルオキシダーゼ:GPx、
スーパーオキサイドジスムターゼ:SOD、カタラーゼ)が低値を示すこと、
過酸化脂質(マロンジアルデヒド:MDA)レベルが高値を示すことが報告されている
(El-Far M ら: Clin Chem Lab Med 45,p879-883,2007)。 |
老化/アンチエイジング/骨代謝 研究用マーカー 【製造元】:Kamiya Biomedical, USA |
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