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用語解説/トピックス  
活性酸素(ROS)とは?
活性酸素種(Reactive Oxygen Species: ROS)は好気性生物が酸素(3O2)を消費する過程で発生する反応性の高い副産物であり、 スーパーオキサイド/スーパーオキサイドアニオン(O2・-)、ヒドロキシラジカル(HO・)、過酸化水素 (H2O2)、一重項酸素(1O2)の4種類が知られています。活性酸素種と よく似た用語にフリーラジカルがあります。フリーラジカルの定義は不対電子を持つことであり、活性酸素種のうち、スーパーオキサイドと ヒドロキシラジカルはフリーラジカルに該当しますが、過酸化水素と一重項酸素はフリーラジカルではありません。


生体内で発生した活性酸素種は、抗酸化物質や抗酸化酵素の働きにより大半が消去されますが、過剰に発生した活性酸素種は DNA脂質、酵素、タンパク質 といった重要な生体成分を酸化させます。こうした生体成分の酸化損傷は、老化現象の亢進だけでなく、糖尿病、高血圧、動脈硬化などの生活習慣病を はじめとする様々な疾患の発症に深く関わっていることが 明らかにされつつあります。活性酸素種/フリーラジカル自体は、反応性が高いため、生体内における半減期が比較的短く、直接測定することは困難です。 そこで、比較的安定な物質である酸化損傷マーカーを用いることで、生体内における活性酸素の発生状況を知ることができます。

一般的に、消費する酸素の2%程度が活性酸素に変わるとされています。 最近の文献(Erich B. Tahara, et. al., Free Rad Biol Med 46(9), p1283-1297, 2009)では、ラット脳、心臓、肝臓、腎臓、骨格筋由来のミトコンドリア では、酸素消費量の0.1~0.2%が活性酸素種に変換されることが報告されています。
活性酸素種の中で、過酸化水素(H2O2)は比較的安定であることが知られています。活性酸素種は従来、生体分子を酸化損傷すると されてきましたが、最近の研究により、過酸化水素が細胞内においてシグナル伝達物質(セカンドメッセンジャー)として機能していることが 明らかにされつつあります。
【参考文献】:
Hydrogen peroxide as a cell survival signaling molecule. Gillian Groeger, Claire Quiney, Thomas G Cotter. Antioxidants and Redox Signaling, ahead of print. doi:10.1089/ARS.2009.2728

Role of Hydrogen Peroxide in NF-κB Activation: From Inducer to Modulator. Virginia Oliveira-Marques, H. Susana Marinho, Luisa Cyrne, Fernando Antunes. Antioxidants and Redox Signaling 11(9),p2223-2243(2009)
酸化ストレスとは?
酸化ストレス(oxidative stress)とは、活性酸素(種)と抗酸化システム(抗酸化物質(antioxidants)、抗酸化酵素(antioxidant enzymes))との バランスとして定義されています。酸化ストレスが高いとは、生体内において活性酸素(フリーラジカル)による酸化作用と、 抗酸化物質等の抗酸化(還元)作用とのバランスが崩れ、酸化反応が亢進する状況のことを言います。 酸化/還元は電子の受渡しによって定義することができます。


酸化とは電子を放出する反応、還元とは電子を受け取る反応のことです。糖や脂肪などの栄養素は、体の中で分解され、細胞の中にあるミトコンドリア で酸化的リン酸化反応によってエネルギーに変換されます。この過程では酸素分子(O2)は還元されて水(H2O2)と なりますが、この過程で酸素分子の一部が反応性の高い活性酸素種となります。活性酸素種の一部は、免疫細胞による生体防御にも利用されますが 過剰に発生した活性酸素種は、酸化ストレスを亢進させ、DNA脂質タンパク質といった生体成分を酸化させていきます。 酸化されたDNA脂質タンパク質の 中には、血液中や尿中に出てくるものがあり、こうした酸化性生物は、生体内の酸化ストレスを知る手がかりとなります(酸化ストレスバイオマーカー)。
特に、DNA酸化で発生する8-OHdG (8-hydroxy-2'-deoxyguanosine)、脂質酸化で発生する イソプラスタン(isoprostanes) ヘキサノイルリジン(hexanoyl-lysine adduct)は尿を使って非侵襲的(採血などで体を傷つけず)に測定できるバイオマーカーとして広く用いられて います。
PCBと発がんの関連性
PCB(Polychlorinated biphenyls:ポリ塩化ビフェニル)は発がんプロモーターであることが知られています。この発がんメカニズムに 活性酸素によるDNA損傷が関わっていることが明らかにされています。
Oxidative DNA adducts after Cu2+-mediated activation of dihydroxy PCBs: Role of reactive oxygen species.
Wendy A. Spencer, Hans-Joachim Lehmler, Larry W. Robertson and Ramesh C. Gupta
Free Radical Biology and Medicine 46(10),p1346-1352(2009)
タンパク質酸化損傷のバイオマーカー
タンパク質は活性酸素による酸化の主要なターゲットの一つであり、主なタンパク質酸化修飾物としては カルボニル化蛋白タンパク質過酸化物(Advanced Protein Oxidation Products: AOPP)ジチロシン、ニトロチロシン(nitrotyrosine)等が知られています。

タンパク質のカルボニル化修飾物は、活性酸素種がタンパク質のアミノ酸残基(Lys, Arg, Thr, Pro)に 直接作用することによって発生するほか、 糖質や脂質酸化物の2次生成物として発生します。こうしたタンパク質の酸化損傷は、タンパク質の構造や機能に重大な影響を与えます。 これまでに神経変性疾患、糖尿病、高コレステロール血症等においてカルボニル化蛋白 が増加することが報告されています。 カルボニル化蛋白は、化学的に比較的安定なバイオマーカーであり、 マロンジアルデヒド等、他の酸化損傷物に比べ比較的長時間血液中に存在することが 報告されています(Pantke U, et. al., Free Radic Biol Med 27(9-10), p1080-1086, 1999)。
酸化ストレスマーカーのアンチエイジング/抗加齢への応用
活性酸素(reactive oxygen species:ROS)に起因する酸化ストレスは生活習慣病や老化(aging)と深く関わっていることから、 酸化ストレスを正しく評価、コントロールすることにより病気予防や老化現象の抑制を実現できることが期待されています。 アンチエイジングドック/クリニック等で予防医学や美容、健康維持の試みが始まりつつあります。特に各個人の酸化ストレス(レドックス)に 合わせてサプリメントや抗酸化性のある機能性食品を摂取することが有効と期待されています。
また、酸化ストレスバイオマーカー(biomarkers)の多くはヒトだけでなく、実験動物等にも利用できることから、 生体内の酸化ストレス評価、抗酸化サプリメントや食品の機能性評価、トクホや医薬品の開発や治験、毒性試験、レドックス解析、 未病診断等への応用が検討されており、数多くの学会発表、論文、特集記事等に引用されています。これまでの主な学会参加/出展は下記の通りです。 ifia食品開発展、日本酸化ストレス学会(過酸化脂質学会・日本フリーラジカル学会SFRRJ/SFRRI)、日本抗加齢医学会、日本フードファクター学会、 日本未病システム学会、BOSHD、日本農芸化学会、国際バイオEXPO等。
カロリー制限とアンチエイジングとの関係
カロリー制限は線虫をはじめ様々な生物において寿命延長効果を示すことが報告されていますが、ヒトをはじめとする霊長類での効果は知られていません でした。2009年、アカゲザルを対象とした20年間にわたる長期試験において、霊長類についても適度なカロリー制限(30%カロリーリストリクション)群は 対照群に比べて、老化関連疾患(がん、糖尿病、冠動脈疾患、脳の老化)の発症率が低いこと、長期試験期間における生存率が有意に高いことが 報告されています。
Caloric Restriction Delays Disease Onset and Mortality in Rhesus Monkeys.
Science 325(5937), p201-204 (2009)
Ricki J. Colman, Rozalyn M. Anderson, Sterling C. Johnson, Erik K. Kastman, Kristopher J. Kosmatka, T. Mark Beasley, David B. Allison, Christina Cruzen, Heather A. Simmons, Joseph W. Kemnitz, Richard Weindruch.

ヒトに関して、カロリー制限(カロリーリストリクション)の効果は実証されていませんが、ホルモン、糖尿病や冠動脈疾患やガンに関連する炎症性 リスクファクターの改善効果があることが示唆されています。
Aging, Adiposity, and Calorie Restriction.
JAMA 297,p986-994(2007) Luigi Fontana, Samuel Klein

カロリー制限が、電子伝達系の構成蛋白質の発現(mRNAおよび蛋白レベル)を上昇させること、ミトコンドリア膜電位を上昇させること、 細胞内におけるROS産生を抑制することが、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)を対象とした研究で示されています。
Caloric restriction improves efficiency and capacity of the mitochondrial electron transport chain in Saccharomyces cerevisiae. Biochemical and Biophysical Research Communications 409(2,3), p308-314(2011).Joon-Seok Choi, Kyung-Mi Choi and Cheol-Koo Lee.
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